
- 2026年2月6日金曜日
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FACTORY KAFE工船
Café gewa
ハートブレイカーズブレンドじゃなくてシングル
2月1日になりました。
今年はめずらしくキャプテンから、
「今年のハートブレイカーズはゲイシャをダークローストで焼いてください。」
と言われ、弊社の社長は相変わらず『前衛』やなと思いつつも、
私は私で、ほんのりとした勝算があったので、素直に引き受けた。
この豆はサードウェーブの雄、「コーヒーカウンティの森くんがセレクトしたホンジュラスゲイシャ種ハニーです」
それをこないだ社長が嬉々として、買ってるのを横目で見てたが、そんな提案するとは。
このやりとり、誰も何も言わないだろうから自分で自分の冗談を解説するという恥を晒すけど、「原則として、ゲイシャ種は深く焼かないものである。」なんですね。実際、ローソンでもスタバでも街のヒップなコーヒーショップでも、
「ゲイシャのダークロースト」は無い。
もし、やってる焙煎家がいたら、よっぽどのシロートかよっぽどのクロートです。
正直、ローソンのゲイシャはなんかよくわからないミディアムローストだったけど、とにかくゲイシャ種という品種は浅ヤキでしか発揮しない豆である。
これは動かしようの無い事実です。
ゲイシャ種をノッてるサードウェーブのコーヒーショップで飲んだらわかるように、まぁド派手、豪華絢爛な味です。
円がシャバシャバに薄まっている昨今でも、清水の舞台から飛び降りる価格帯を払えば、世界的な希少品種ゲイシャ種とは何たるかは、誰でも瞬時に理解できるくらいハッキリと美味い。
セトは焙煎家なので、よくゲイシャを飲むが「あ〜ハイハイ、ゲイシャですね。」という感じで面白くも何とも無い。美味いですよ。でもそれだけ。
ゲイシャ種は凄い。凄いけど金の茶室みたいなんだよな。
せっかくコーヒーは焼いて減らす美学を持ってるのに、その技巧が活かせない。
誰が焼いてもさして変わらない。
文句なく美味いけど、別に愛してはいないの。がゲイシャ種です。
とはいえハッキリと美味くないゲイシャはゲイシャであることを疑った方が良い。
そんな浅く焼けば、100パー美味いゲイシャ種をなぜに敢えてダークローストにするのか。
味無くなりますよ。他のコーヒーならともかく、ゲイシャ種は浅ヤキのレンジを過ぎると味が無くなる。
所謂、「なんか焼いた味」しか残らなくなる。これは、わかりきっていることだ。実際こないだ、フツーに中深で焙煎したら味なくなったわよ。
かつて凄い貴族が住んでいたあばらや。みたいな感じあって嫌いじゃなかったけど、あばらやは結局あばらやだからな。
とにかく、無理筋なんです。
私の中の全てのイマジナリーコーヒー師匠が「否」と言っている、もちろんイマジナリー師匠のグランドマスターであるオオヤもゲイシャのダークローストには「否」であるにも関わらず、ダークローストにしてみて。って言う。
そのこころは?1000年前から京都の人は意地が悪い。
それは、結局やってみないとわかんないから。である。
現実と想像は違う。恋が現実になったらもう恋じゃないように。
それがダメなわけじゃない。
浅ヤキも深ヤキもどちらが悪いわけじゃない。良い焙煎と悪い焙煎があるだけ。
オールドスクールの雄を自明とするなら負け戦でもやっちゃいなよ!とキャプテンは言ってるのかも。
やってみないとわからないとは、まさにこの事で、何を隠そう再来月には、私は46歳になる。
こんなにも、毎日が絶望の連続だって若い頃は思いもよらなかった。
何かを書いてみようとすれば、「物言えば、唇寒し、秋の風」である。
自分の言うこともやる事も、全部寒々しく虚しい。松尾芭蕉がこんな暗いとは。
全てがくだらなくて、どーでもいい。
若い頃、頭が悪かったためにスグ絶望したが、頭が悪いのが幸いし、
すぐに忘れて恋や仕事にサクセスできたのだ。
それが40歳を過ぎるとどうだ、片時も絶望が晴れることなど無い。
時代がそうだから。というのは簡単だが、たぶんならどんな時代にも絶望はあったはずだ。なんなら昔の方が断然過酷だが、どの時代の絶望も人間がいつか死んでしまう以上、1000年前から変わらない。
何を今更である。
「萩の花 暮々までもありつるが 月出て見るになきが 儚さ」
陽がある時に咲いていた萩の花が、もう無い。
あったものがもう無い。ってなんて悲しくて美しいのか。
実朝、昼に見た萩の花を夜に見に行ったんやな。
源実朝が萩の花を詠んだ時、まだ若かったのに、もう長くはないと知っている人の絶望は凄いものがある。
解るよ、今なら実朝の気持ちが。
実朝がどんな宿命を背負ってたかは、調べたらすぐわかるので書かないが、
長くは無い「いつか」が来ることを知りつつも、それでも人は生きなければならない。なんでかは知らないけど。
こういうのは、もう若くなることが無い人間の宿命なんだと思う。
だから昔のように晴れることなど無いのだ。
風景も人も味も、どんどん変わっていく。
自分が拠り所にする景色を失っていくのだ。
愛したり憎んだ人も、街も、店もなくなってしまう。
なのに私は、長生きはやってみるものだと思う。
絶望に慣れろ。と私は思う。
何故なら、やまとごころ。というのは、絶望的な溜息だからだ。
ここで大好き、藤原義経の歌。
手にならす夏の扇とおもえども
ただ秋風のすみかなりけり
かっこいい。絶望をこんなふうに解釈することもできる。
たった31語ですよ。
もう絶望がスマート。
絶望は、無くならないがその見方は無限にある。
溜息を歌にかえて、ポータブル詩歌を携えて社会の外に出るのだ。
って何の話だっけ?
つまるところ、ゲイシャ種をダークローストで焼くという酔狂は、まさに今の私のやるべき仕事なのだ。味は詩歌とよく似ている
華麗なる味わいを知りつつも、それはもう過去。あの輝いていた味わいを再生させるように焙煎してみる。
あくまでも、再生は「Re peat」であるから、あの同じ輝きとは違うけれど、それも悪くないってことが、私の勝算です。
技巧とは、無いところから必要に迫られて手繰り寄せるものだから。
そして、また春がやってくる。
ハートブレイカーズのコーヒーは、2月上旬、カフェ工船、カフェゲバにて販売しています。店頭ではドリップもお楽しみいただけます。
店頭販売は2月11日~
オンライン販売は、2月8日までお申し込みいただけます。
オンライン販売はコチラ→https://ooyacoffee.stores.jp/items/696f5ec6e6bd95673c6fb5fe