「ぼくのコーヒー地図」書評 山田 絹代(山形 ペンギン文庫)

この本をきっかけに通い始めたお店がある。最初は旅先で新しい場所を見つけるような高揚感と緊張でどこか落ち着かなかったが、食べたサンドウィッチの美味しさとブレンドコーヒーのやわらかさを覚えている。その日から、何度も何度もお店に向かい、ひとつの考え方に凝り固まる頭を切り替えたい日、沈んでいくような心持ちの日、遠い町にいる大切なひとに手紙を書きたい日、雨の日、私にとってささやかな日常の風景になった。

これから日本各地を旅する際に『ぼくのコーヒー地図』はここにも生活をしている人々がいていろんな思いを抱えながら生きていて、どこのお店にもそれぞれのだれかの日常があるのだと安心できる。

日常を旅する、岡本仁さんが見つめる先にそれぞれのお店をかたちづくるものが浮かび上がってくる。