オオヤコーヒ焙煎所 / KAFE工船 / カフェゲバ / 白浜STAND! | 京都 / 倉敷 / 白浜 自家焙煎コーヒー専門店

京都のオオヤコーヒ焙煎所のウェブサイトです。直営店は、自家焙煎ネルドリップコーヒー専門店の京都 KAFE工船と毎月10日間限定営業の和歌山・白浜 pingpong & coffee 白浜STAND!、カレーライスとトーストとエスプレッソコーヒーの岡山・倉敷 カフェゲバです。ご家庭用の契約販売、業務用コーヒーの卸売も行なっております。

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  • 2024年9月20日金曜日
  • PostedCOFFEE BREAK

季節のジャムとエッセイ

鶴見さんに描いてもらう季節ごとのジャムレシピとエッセイは、”四季”の情緒なきコーヒーを助けてくれます。その季節その季節にジャムを1口、コーヒーをすすり、散文を少しとお楽しみ頂けたなら幸いです。

オオヤコーヒアソシエの季節のジャムとエッセイ

|春 苺と八朔 「柑橘という宇宙船」
|夏 桃のジャム 「桃のうぶ毛」
|秋 京番茶と栗 「栗と嵐」
|冬 冬のジャム(ベラベッカのジャム) 「クグロフを抱いて」


<春>


ツルミ製菓 連載 春

「柑橘という宇宙船」

ここ最近はコロナの影響で行けていないが、以前は毎年冬になると宇和島の柑橘博士のところへ収穫の手伝いに行っていた。

宇和海に面したリアス式海岸はかつて「東洋のナポリ」と評されたように、青い海とのコントラストが美しく、海風の当たる山の斜面には段々畑に柑橘の木が植っていて、季節が変わるごとにさまざまな景色を見ることができる。

初夏になれば宇和島半島がみかんの花のムンとした香りに包まれ、冬になれば至る所に黄色や橙色の丸い果実が溢れる。収穫の最盛期になると、鳥がつまんだり収穫中に落としたりして木から落ちた柑橘が道端にゴロゴロと転がっているのだ。人ん家の庭先に実った夏みかんや、箱に詰まった柑橘しか見たことのない人には少しシュールな光景かもしれない。

あるとき、柑橘博士の運転する軽トラの窓からたわわに実った柑橘を眺めていたら、「おまえさん、なんで柑橘の形は丸いか知っとるか」といって、その理由を教えてくれたことがある。

「あれはな、木から落ちて山の傾斜をコロコロコロと遠くまで転がっていきやすいようにできてるんよ。そうしたらまた違う場所で発芽して、そこで根をはって子孫を残せる。人も動物も丸いもんに目がいくから、なんとなく魅力的に見えるやろ。丸い形が気になって、手に取りたくなるようにできている。柑橘も、地球も、目玉も、おっぱいも丸い。あんたさんもおっぱいが好きやろ」

といってガハハと笑っていた。

おっぱいのことはとくに好きでも嫌いでもない。

少しいい加減な感じもするが、聞いているとなるほど合理的にできているような気がする。

「それから柑橘の皮。あれは、宇宙船みたいな構造なんよ。油を沢山含んだ外皮の部分が果肉の乾燥を防いで、白いワタの部分は断熱と空気清浄機のような役割。そうやって外の環境から大事な果肉を守っとるんよ」と続けた。

窓から入り込む潮風に吹かれながら博士の話を聞いていると、目の前の畑になっている柑橘を今すぐもぎとって撫でたいような衝動に駆られる。

普段何も気にせず頑丈な皮をむいて口にしていた柑橘も、そうやって説明されたらやけに愛おしく思えるではないか。

その翌日、ボーッと考えごとをしながら収穫の手伝いをしていたら、足を滑らせてバケツいっぱいのブラッドオレンジをひっくり返してしまった。仕事が増えるだけの迷惑な手伝いである。

「あ~っ!」と叫び声をあげるも虚しく、ブラッドオレンジは急な斜面を勢いよくゴロゴロゴロと転がっていき、途中石にぶつかったものは飛んだり跳ねたりしながら、あっという間に目の届かないところまで消えていってしまった。

ため息をついて項垂れ、まだ木になっている残りのブラッドオレンジに目をやると、まるで、ズラリとならんだ丸い宇宙船がどこか遠いところへと飛んでゆく準備をしているかのように見えて、なんだか少しゾッとしたのだった。

おしまい。

 

●春の鶴見さん監修のジャムは「苺と晩柑(紅八朔)のジャム」です。


 


<夏>


ツルミ製菓 連載 夏

「桃のうぶ毛」

蝉がミンミン鳴きはじめると、「今年もそろそろ桃を買うかな」と思い出す。子どもの時は、夏になると誰かしら山梨や福島の桃を送ってくる人があって、切ったあとにキンキンに冷やして色が変わったような桃が晩ごはんの後よく食卓に登った。 桃が我が家にやってくると台所がいい匂いに満ちて気分が良かったし、食べると美味しい果物だとは知っていたけれど、その反面、触ると果皮のうぶ毛がチクチクと手に刺さるのが気持ち悪くて、なんだか鬱陶しい果物だなと思っていた。

オジサンと呼ばれる歳になって熊本に数年住み、料理家の細川亜衣さんと親しくなった。それまで桃といえばもっぱら生で食べるかコンポートにするくらいだったけれど、彼女と出会ってから、夏が来るたびに新しい桃の食べ方を教えてもらい、自分のなかの桃の美味しさが毎年アップデートされていった。豚のかたまり肉とローストした丸ごとの桃、パンケーキに乗った桃のスライス、桃ジャムを溶かして飲む冷たい牛乳、皮ごと凍らせた桃のソルべ、トーストが食べ進まないときに乗せる白桃と粗糖…挙げればキリが無いが、どれひとつとしてその美味しさを忘れることができない。

最近は、桃を食べたり調理しているときにその匂いを追いかけることに凝っている。いわゆる白桃の香りから、金木犀や、夜香木や、梔子(クチナシ)や、バラの芯みたいな、花の香りに似たニュアンスを感じて一人うっとりしている。⻩桃からは 何処となく海の匂いがする…ような気がする。

数年前、オオヤさんに桃とコーヒーがよく合うことを教えてもらって、これにも驚いた。あの薄ぼんやりとした瑞々しい果物にコーヒーは強すぎるような気がしていたけれど、用意してくれたマンデリンと一緒に食べると、なるほど、飲み込んだあとに不思議と味の輪郭がはっきり浮かび上がる。何と食べるかによって、こんなにもドラマティックに味が変化する果物もなかなか珍しいのではないだろうか。
と、まぁ歳をとって桃の楽しみ方も色々と知ったわけだが、皮のうぶ毛、これだけは変わらず鬱陶しい。桃のうぶ毛さえ、恋人か誰かがきれいに洗い落としてくれるなら、あとは如何様にも美味しくして食べさせるのだけど。

●夏の鶴見さん監修のジャムは「白桃のジャム」と「白桃とアマレットのジャム」です。


<秋>


ツルミ製菓 連載 秋

「栗と嵐」

熊本に住む以前から、鹿児島にほど近い人吉という町の栗農家へたびたび足を運んで収穫の手伝いをさせてもらっていた。老夫婦が営むそこには栗畑のほかに、桃の園地や自家消費用の野菜の畑があり、秋になるといい匂いを放つ大きな金木犀の老木なんかも植えられていて、東京から来た私にはまるで楽園のように目に写った。栗の収穫は大きな籠を持ってトングを使い、木から落ちた毬栗をひたすら拾っていく。

籠いっぱいに採れたように見えても、そのほとんどはイガであって栗は大した量にならない。中身が痛んでいないか見極めながら中腰で栗を拾っていくのは意外と重労働だ。毬栗がある程度集まったら今度はベルトコンベアー式の機械にかけてイガと実を分けていく。振り分けられた栗の実は次に水を張ったコンテナに移されて、きれいさっぱり洗いながら浮いてきたダメ栗を選別する。最後に大きなタオルで栗の水気を綺麗に拭き取り、はれて出荷用の段ボールに詰められる。その一連の作業を手伝わせてもらいながらふと農家の方たちを見ると、まるで産まれたての赤ちゃんを扱うように微笑みながらバスタオルで栗の水気を拭いていたのが目に入った。

こんなに大事に作られているのかぁと感心して、それ以来わたしも栗を剥くときにその光景を思い出すようになった。子供を慈しむように育てられた栗である。台風が九州へ接近する度に、熊本の栗が未熟なまま落ちてしまわなかっただろうかと心配になる。数年前の台風の日、いてもたってもいられず栗農家の方に電話をかけると「やはり嵐のことは心配です。皆頑張ってきましたからね」と暗い声で話す老婦人。一年をかけて大事に育てていらしたから気が気じゃないのだろうなと思っていたら、「コロナで解散コンサートもできるかどうか」と続けた。

台風は熊本を直撃せずに何処かへ逸れたらしく、彼女はそれよりもジャニーズの嵐が解散してしまうことを憂いていた。どうやら農作業中にラジオから流れる嵐の曲を聴いてファンになったようだ。私の心配は杞憂で、農家って結構逞しいんだなと思った出来事であった。

 

●秋の鶴見さん監修のジャムは「栗と京番茶のジャム」です。


<冬>


ツルミ製菓 連載 冬

「クグロフを抱いて」

フランスにはコンフィチュール・ド・ノエル(クリスマスジャム)というものがあるらしいと雑誌か何かで知って、20歳の冬にフランス東部にあるアルザス地方を訪れたことがある。パリ東駅からTGVという高速鉄道に乗って約2時間半、コルマールという小さな町に着くと、ぽっちゃりしたおばさん達と可愛らしい装飾の家々が立ち並ぶ景色が目に入った。

やさぐれたパリの雰囲気と打って変わって、まるでシルバニアファミリーの世界に迷い込んだかのようだ。先ずは腹ごしらえをと、街をぶらぶらしながら適当な屋台を見つけて、ベーコンや玉ねぎが散りばめられた熱々のタルトフランベを頬張り、ビールで喉の奥へと流し込む。小腹が満たされたら、ビスキュイトリー(クッキー屋)を探してショーケースに並ぶ沢山のサブレの中から気になるもの幾つか選び、袋から取り出してポリポリと食べながら散歩のお供にした。するとあっという間に夜ご飯の時間である。電話で予約する度胸なんて無かったから、なんとなく美味しそうな店にふらりと入り、細長い独特な形のワイングラスてアルザスワインを飲みながらシュークルートやエスカルゴをお腹に収めた。なんだか優雅に聞こえるかもしれないが、一人旅である。食欲絶頂期だった若かりし頃の私をもってしても、大量の芋、豚、小麦の連続に、半泣きになりながら食べたのを覚えている。1人旅だと夜ごはんが辛い。翌日はホテルにタクシーを呼んで、いざコンフィチュール・ド・ノエル のあるメゾンフェルベールへ。コルマールから車で15分くらいでメゾンフェルベールのあるニーデルモルシュヴィルに着いた。タクシーのおじさんにちょっと待っててと伝えて、メーターを気にしながら大急ぎで店内を物色。
お店の中にはお菓子やジャムの他にも、よろずやのように新聞や生鮮食品なんかが並んでいる。これは今も治っていない悪癖だが、私は興奮するとあと先考えずに目に入ったものをとりあえず買ってしまうたちで、例に漏れずこの時も(タクシーを気にしていたのもあるが)一人旅だというのを忘れて大量のジャムとケーキとパンを買い込んでしまった。アルザスにはクグロフという菓子パンがあって、これも名物だからと1ホール(成人の頭くらい大きい)丸ごと買って帰ったから、この日の晩ご飯はもうこれを食べるしかなくなってしまった。ホテルのベッドに座り、ドライフルーツやナッツの沢山入ったコンフィチュール・ド・ノエルをクグロフに乗せて一口。暖炉やキャンドルのある温かなアルザスの食卓が一瞬頭に浮かんだけれど、 ここはうすら寒い安ホテルである。想像したよりもパサパサとしたクグロフが喉につまり、巨大なパンの塊が全然減っていかない。お腹が膨れていくと共に、「こんな風に食べるもんじゃないよな」と妙に気持ちが冷めていき、フランスの片田舎まで来てパサついたパンを貪り私は一体何をしているんだろうと虚無に陥った。

しかしこれがその時の私にできる精一杯だったのだ。ひとりでアルザスくんだりまで来たのだから良しとしようという慰めも虚しく、急に襲ってきた寂しさと乾いたパンの満腹感に耐え切れずにその日は食べかけの巨大なクグロフを抱いて不貞腐れるように寝たのであった。

●冬の鶴見さん監修のジャムは「ベラベッカのジャム」です。
刻んだドライフルーツとローストしたナッツを、スパイスとかりんのジュースで炊いたジャムです。ドライフルーツとナッツをふんだんに使っているので、ごろごろしていてとっても満足感のある楽しいジャムです!


ロシアがウクライナに攻め込んで我国のTVは正義の味方を応援!画面に映る攻撃を受け廃墟と化した街にロシアの旧式のボロ戦車が語る事はミンシュシュギでは理解不能。TVのスイッチを切り「ジャムでも作ろう」と思う、「この様な時は鶴見君と遊ぼう」と思う。
最近バンドを脱退した鶴見君をオレのバンドにスカウトしたのだが自分のバンドを作るとの事、バンド名は”ツルミフーヅ”まぁまぁのネーミング、未だメンバーは1人、活動拠点はジ、タ、ク!「おいおい」と思うのだが既にゴールデンウィークのLiveは満員との事。彼このところノッてるよ!との噂はどうやら本当らしい。
ノッてるツルミならウチのバンドに1曲書いてもらいたいものだぜ!とのオファーに応えて貰ってこの春から年4回季節のジャムをオオヤコーヒに縁ある地の材料でレシピを書いてもらう。勿論レコーディングにはバッチリ立ち会って頂くつもりです。
ファーストジャムは和歌山(白浜)のイチゴ(まり姫)と晩柑の2つのジャム。かなりのスタンダードナンバー鶴見君の得意とするところでのスタートです。
この後夏には岡山の桃、秋には京都の栗とお茶、冬にはクリスマスオムニバスと予定しています。
是非オオヤコーヒ各店でジャムトーストとかを食べて頂きたいものだぜ。
小分け売りも予定中、わかってるグルーピーにはすぐにでも闇でおわけ出来るとおもいます。
店頭にて「鶴見君のアレありますか?」とスタッフに小声でおたずねください。(※現在、各店にて販売中です。)
※最近、思うところあってツルミフーヅからツルミ製菓に変更となりました。(また変わるかもね)
2022年5月1日

●Profile

鶴見 昂
東京・二子玉川の「カフェリゼッタ」、石川・小松市の「TEATON」などのメニューをプロデュース。都内で定期的に菓子教室「ツルミ製菓」を開催中。

 

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